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提出書類の効果と注意点

 障害年金の申請は書類のみで審査されてしまいます。ですので、提出書類には不備や矛盾点をなくすこと、そして実態通りの診断書を得るということがなによりも大切だということを理解してください。

 ここでは主に出す書類のよくありがちな間違いと注意点等について解説していきます。

受給状況等証明書

受給状況等証明書は障害年金の請求において重要な日付である「初診日」を証明するのに必要な書類です。初診日の判断を誤ると、何度も受診状況等証明書を取らなければいけなくなったり、診断書の訂正をしければいけなくなってしまうのが慎重に初診日を断定する必要があります。

具体的には初診日を証明することによって以下のことがわかります。

  • 初診日にどの年金制度に加入していかによって、支給される障害年金の制度が決まります。
  • 初診日の前日が保険料納付要件をみる基準日になります。
  • 初診日から1年6ヶ月経過した日が障害認定日となりますので、初診日がわからなければ、障害認定日も決まらない、ということになります。障害認定日が決めっていない以上、障害状態の評価も行うことができませんので遡求して申請もできないことになってしまいます。

診断書

診断書は役所に出す書類の中で最も重要な書類です。障害年金をもらうには大前提として障害の状態にあるということが必要ですが、本人の申し立て以外の手段で第三者に障害にあることを証明してもらう必要があります。それができるのが医療のスペシャリストである医師です。しかしながら、医師は医療のスペシャリストであっても障害年金のスペシャリストではありません。実務上、無策で医師に診断書をお願いした結果、実態通りの診断書を入手出来ないケースを多くみられます。具体的には以下のようなケースが考えられます。

医師に適切な説明をしなかったケース

 精神科への受診をしていると、日常生活について詳しく話す機会はほとんどなく、薬だけもらう為だけに通院しているだけの状態のケースが多くあります。話す機会があったとしても医師の前では、優等生を演じてしまい事実ではないことを言ってしまい 例えば、本当は家族の助言なしでは規定の時間に薬も飲めないのに「医師の処方した薬を正しい用法用量で飲めている」と言ってしまったり、女性の患者であるがために、1ヶ月に1回しかお風呂に入れて状況にもかかわらず「毎日お風呂に入れている」と、女性特有の羞恥心から事実ではないことを言ってしまう、その結果、実態通りの診断書が得られないということもあります。 

体調がいい時の状態で診断書が書かれてしまうケース

 鬱病などの精神疾患は日々に体調が変化します。一ヶ月のほとんどを家で引きこもり、体調のいい日にだけ病院に通う方も少なくありません。 医師は患者と24時間、常に一緒に過ごしているわけではありませんから、診療に訪れた時の状態で患者の病態を判断するしかありません。それにも関らず、診療の際に体調の悪い日のことを全く話さずにいたがために、すべての日常生活欄を体調がいい日を想定して書かれてしまうということがあります。

単身で生活したとした時の状態を想定していないケース

 障害年金を受給できる多くの精神疾患者の方は、家族と同居し、生活についてある程度援助してもらいながら生活しています。しかし家族が同居している生活では、一見生活能力が高く見えてしまい、正確な障害状態が分かりません。そのため「単身で生活するとしたらできるか」という見方で判断することが重要なのです。この点の認識が医師に不足していて、本来よりも軽度の診断書を書かれてしまうことがあります

整合性がとれていないケース

 診断書自体には記入漏れ等はないが、日常生活能力の各項目の整合性がとれていない診断書をよく見受けます。具体的な例をあげますと、日常生活能力が著しく低下しており、家族の援助を借りてなんとか日常を生活を営んでいるという病態にも関らず、未だに労働能力が多少なりとも残っているいう記載されてしまっていることがあります。

 臨床医学の上では、労働能力が多少残っているのも、労働能力が喪失しているのも大きな差はないのかもしれません。しかし、障害年金の世界では労働能力の有無は等級を決める上でも非常に大切な要素なのです。

上記の4点に注意することが必要だと思います。

病歴・就労状況等申立書

 病歴・就労状況等申立書は自分で自らの病態を行政に訴えることができる唯一の書類です。もちろん請求者本人以外にも請求者のご家族が記載することも可能です。しかし、記載内容に縛りがないがゆえに不適切な病歴・就労状況等申立書を提出してしまい、結果として不支給になってしまうこともあります。

作成にあたっての留意点は以下の3点です

病歴・就労状況等申立書の役割について理解する

病歴・就労状況等申立書には以下のような役割があります。

  • 発病から現在までの障害状態の流れについての資料となる
  • 発病日の判断材料になる。
  • 初診日確定の判断材料になる
  • 社会的治癒をを判断する上での資料となる

ExcelやWordを使ってつくる

年金事務所や市役所に直接相談に行くとA3サイズの病歴・就労状況等申立書を渡されます。この書類に直接記入してもいいのですが、Excelを使って作成することも認められています(サイズはA4でも可)。字が乱雑な人、記入事項が多い点、通院歴が曖昧な記憶の人の場合は、書き直し箇所がでる可能性は非常に高いのでExcelを使って作成することをお勧めします。

矛盾や不備がないようにする

受給状況等証明者や診断書と比べた結果、病歴・就労状況等申立書に矛盾等があると書き直しの可能性や、病歴・就労状況等申立書の信憑性までもが下がってしまいます。病歴・就労状況等申立書は診断書と同様に審査に大きく影響する書類ですので、障害年金専門の社労士にチェックしてもらうべきだと強く思います。

一つの事例をご紹介いたします。

《Aさんは躁鬱病を患い、机の周りで行う極めて軽易な作業のみを、一日4時間時間短縮労働で働いていました。しかし、病歴・就労状況等申立書を記入した時期は、ちょうど躁転した時期で、普段より、気力や爽快感に溢れ、問題なく働けるような気になってしまいました。そこで病歴状況等申立書には「毎日きちんと会社で就労している」とだけ書いてしまったのです。その結果「診断書が重い病態のものを出したものであっても、本人が申し立てているのだから、診断書はオーバーに書いてあったのであろう」と判断されてしまい、鬱状態のことは反影されずに不支給決定になってしまいました

 このような悲劇が障害年金の世界では数多くあります。同じ病態であっても自ら記入した病歴・就労状況等申立書によって結果が天と地ほど異なるのです。

  このようなことから病歴状況等申立書を作る際には、他の書類との整合性を確認しながら、簡潔に作成し(読み手に伝わりやすいように)、自分に不利になるような記述になっていないかに細心の注意を払うことが大切かと思います。

障害年金請求書

 この書類は障害年金請求の最後に書く書類です。提出段階での注意点が3点ありますので、ご説明します。 

加算対象者を必ず確認すること

 障害等級が2級以上に該当するとその方に生計を維持されている配偶者(65歳未満)や子(18歳になった後の最初の3月31日まで)がいる場合に、一定の加算金が加わります。必ず自身の状況に合わせて対象者が漏れていないか確認して下さい。

*生計維持とは必ずしも同居を条件としていません。

*離婚した場合であっても子に対して毎月養育費等を定期的に支払っている場合は子の加算の対象になることもあります。

*事実婚も対象です。

提出書類のコピーをとっておくこと

 年金事務所に障害年金の各種書類を提出したときに、障害年金請求書・診断書・病歴状況申立書・受診状況等証明書などは返却されませんのでコピーを取っておくことをお勧めします。(コピーが取り忘れた場合でも申請した提出年月日が分かれば、提出した年金事務所にコピーが保管されているので後日探してもらえます) 

そうすることで、万が一、不支給となってしまった場合でも、社会保険労務士に相談する時に審査請求にスムーズに進むことができます。

また、障害年金が支給された場合、その数年後に障害年金の更新をすることになります。その時に、以前に提出した診断書のコピーがあれば、審査の基準として大変役に立ちます。 

障害年金の請求をできるだけ早く行うこと

障害年金の請求方法で、事後重症請求(障害認定日には障害状態にはなかったが、後から病態が悪化し障害状態に該当したときの請求方法)のように申請した月の翌月から支給されるような請求方法だと、請求月が遅れた分だけ損をしてしまいます。つまり、極端なことを言うと月末に提出しようと思ったが結果として1日遅れて、翌月の月初に提出してしまった場合、たった一日遅れてしまっただけで1ヶ月分の年金を損することになってしまうこともあり得るのです。

ですから、提出書類がそろった時点ですぐに年金事務所等に申請をしに行くことをお勧め致します。

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